教育学特論  

 川上英明

2単位

 専攻科保育専攻


履修系統図番号 6A-2010
科目区分 専門教育科目
必修、選択の別 必修 教職選択(幼) 教職必修(小)
授業形態 講義

到達目標 (1)現代の教育学における主要なテーマについての基本的な知識を獲得する。
(2)教育学に特有の問題について、過去の教育学者たちのテクストに基づき、自らの思考を深めることができる。
(3)よりよい教育実践を行うために、臨床的な深みと、社会的な広がりのある展望をもつことができる。
授業概要   本講義は、現代の教育学における主要なテーマを取り上げ、その基本的な問題意識と学説について紹介した上で、受講生たちがそれぞれのテーマを「実感」をもって考えることができるようになることを目的としている。現代教育においては、ポストモダン以後、規範をいかに語るかという問題や、「人間」概念の問い直し、子どもの性・ジェンダーの多様性、主体性とエージェンシーなど、様々な問題やテーマが湧出している。本講義では、これらの問題の根本を問い直し、受講生たちが自らの「実感」もってこれらの問題に向き合い、時には過去の教育者や教育学者のテクストに触れて考えることを期待している。これらを通して、現代の教育学における主要なテーマを知り、その問題を生涯にわたって考え続けるきっかけを与えたい。
  なお、本講義では、哲学対話を取り入れることで、対話を中心としたアクティブ・ラーニング型の授業を行い、状況によっては、オンライン教材等を用いた遠隔授業を行う。

学習内容
回数 内容 学習のポイント(事前事後の学習を含む)
1回 ガイダンス 学習のポイント:ガイダンス
事前学習:シラバスを熟読する。(30分)
事後学習:本講義の到達目標と概要について復習する。(60分)
2回 「人間」とは何か――教育学と教育の歴史における人間の定義 学習のポイント:近代教育と「人間」の定義
事前学習:配布資料を熟読する。(60分)
事後学習:近代教育と「人間」の定義をめぐる問題についてまとめる。(120分)
3回 「人間」が消滅するとはどういうことか――フーコーの予言 学習のポイント:フーコーの予言
事前学習:配布資料を熟読する。(60分)
事後学習:フーコーにおける「人間」の問題についてまとめる。(120分)
4回 「人間」の後に誰が来るのか――「ポスト・ヒューマン」をめぐる現代思想 学習のポイント:ポスト・ヒューマン
事前学習:配布資料を熟読する。(60分)
事後学習:ポスト・ヒューマンについてまとめる。(120分)
5回 「ピンクはおとこのこのいろ」を問題視しているのは誰なのか 学習のポイント:ジェンダーと教育の問題
事前学習:配布資料を熟読する。(60分)
事後学習:ジェンダーと教育の問題についてまとめる。(120分)
6回 何が子どもの性別を固定化しているのか――歴史と制度の中に見る「教育とジェンダー」の問題 学習のポイント:幼児教育と初等教育にひそむジェンダー
事前学習:配布資料を熟読する。(60分)
事後学習:幼児教育と初等教育にひそむジェンダーについてまとめる。(120分)
7回 なぜ学校において性的マイノリティは排除されるのか――歴史的事例と教育制度の観点から 学習のポイント:学校における性的マイノリティの排除の問題
事前学習:配布資料を熟読する。(60分)
事後学習:学校と性的マイノリティの問題についてまとめる。(120分)
8回 「多面的・多角的な思考」とは何か 学習のポイント:多面的・多角的な思考について
事前学習:配布資料を熟読する。(60分)
事後学習:多面的・多角的な思考の教育的意義についてまとめる。(120分)
9回 「ケアの倫理」と教育の問題 学習のポイント:ケアの倫理と教育
事前学習:配布資料を熟読する。(60分)
事後学習:ケアの倫理と教育の問題についてまとめる。(120分)
10回 「傷つけられやすさ」について考える 学習のポイント:傷つけられやすさ(Vulnerability)
事前学習:配布資料を熟読する。(60分)
事後学習:傷つけられやすさについてまとめる。(120分)
11回 「共感」とは何か(1)「ネガティブ・ケイパビリティ」の概念史 学習のポイント:ネガティブ・ケイパビリティ
事前学習:配布資料を熟読する。(60分)
事後学習:ネガティブ・ケイパビリティの教育的意義についてまとめる。(120分)
12回 「共感」とは何か(2)「アナーキック・エンパシー」について 学習のポイント:アナーキック・エンパシー
事前学習:配布資料を熟読する。(60分)
事後学習:アナーキック・エンパシーの意味についてまとめる。(120分)
期末レポートの準備をする。(180分)
13回 「主体性」とは何か(1)「主体化=従属化」について 学習のポイント:主体化=従属化
事前学習:配布資料を熟読する。(60分)
事後学習:教育における主体化=従属化の問題についてまとめる。(120分)
期末レポートの準備をする。(180分)
14回 「主体性」とは何か(2)「エージェンシー」とは何を意味するのか 学習のポイント:エージェンシーの批判的検討
事前学習:配布資料を熟読する。(60分)
事後学習:OECDが言うエージェンシーの問題点についてまとめる。(120分)
期末レポートの準備をする。(180分)
15回 総括講義 学習のポイント:期末レポートの解説
事前学習:配布資料を再び熟読する。(120分)
事後学習:本講義での学習に基づいて、自らの教育実践を振り返る。(60分)

成績評価の方法・基準 毎時の授業コメント30%、期末レポート70%で評価する。
・期末レポートは、基本的に、S(63点)、A(56点)、B(49点)、C(42点)、D(不合格)の五段階で評価する。ただし、完成度によっては70点をつける可能性もある。
教科書・参考書 教科書は指定しない。

参考文献:
・今井康雄編『教育思想史』有斐閣、2009年。(¥2,200)
・岡野八代『ケアの倫理:フェミニズムの政治思想』岩波書店、2024年。(¥1,364)
・谷川嘉浩ほか『ネガティヴ・ケイパビリティで生きる』さくら舎、2023年。(¥1,980)
・中野円佳『教育にひそむジェンダー:学校・家庭・メディアが「らしさ」を強いる』筑摩書房、2024年。(¥946)
・ブライドッティ,ロージ『ポストヒューマン:新しい人文学に向けて』門林岳史監訳、フィルムアート社、2019年。(¥3,300)
・ブレイディみかこ『他者の靴を履く:アナーキック・エンパシーのすすめ』文藝春秋、2021年。(¥1,595)

参考映像
・是枝裕和監督/坂本裕二脚本『怪物』2023年。

ほか、授業内で紹介する。
履修条件 修了必修、幼稚園教諭一種免許取得者、小学校教諭一種免許取得者
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